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全員が飲み物を口にし落ち着いた頃、ようやくルルーシュは口を開いた。 「扇は精神鑑定後、病院に入れられるだろう。テレビを通し8月10日に宣戦布告すると言った以上、ブリタニア側にも伝わる。だから、その日に宣戦布告はない。何より皇子である俺を悪魔呼ばわりした。それを理由に外交で攻めてくるのがまず先だ」 ブリタニア人にとって、神にひとしいブリタニア皇族をテレビを通し侮辱したのだ。ブリタニア国民の怒りを抑える事がまず先。日本に制裁を加え、実行犯に相応の刑罰を求め、国と実行犯に公式に謝罪させる。 これを理由に開戦することも可能ではあるが、それでは一市民にすぎない扇たちの安い挑発に乗った形になってしまうため、その手は使わないだろう。 つまり開戦は間違いなく先送りになる。 上手く立ち回れば数年引き延ばせるだろう。 「ゲンブ殿がブリタニアとの交渉で上手く立ち回れるよう手を打とう。なにせ悪魔呼ばわりされた俺はゲンブ殿の庇護下にあり、重症だった体もこうして確実に癒えている。手厚い待遇を受けている事をアピールし、開戦しにくい状況を反対に作り出してやる」 母を殺され、心と体に傷を負った皇子と、皇女。 これほどいい素材はないだろう。 「それはいいですね。ラクシャータの治療記録は解りやすいですし、これだけルルーシュ様を大切に扱っている国に攻め込むのは難しくなります」 「じゃあ、見られてもいいように資料をまとめなきゃね。セシル手伝ってくれる?目は失明のままにしないといけないから、手直しが必要なのよね」 ルルーシュの治療記録に関しては、ラクシャータとセシルが完璧に整えるだろうから、こちらは何も問題はないなと、ルルーシュは頷いた。 「俺だけではなく、カグヤまで敬称をつけずに呼び、自分と共に日本を復興させたと言ったからには、おそらくカグヤの元へ問い合わせが来るだろう。だから、今まで複数回電話が来ていた事を、公共の電波に乗せてほしいんだが」 日本の皇族であるカグヤにまでしつこく問い合わせをしていた。それは事実だから、その事を公表し、扇たちがいかに常識はずれな行動を取り続けていたかを世間に知らせたい。 「それはいい考えですわ。ではそのように手配いたしましょう」 たまたま今日遊びに来ていたカグヤは、それはいい考えだと口にした。 「扇がナイトメアの話をするかもしれないな・・・そこをどうするかが問題だ。出来れば全て妄想という事にしたい」 どうして話さないんだと思ったが、話さずにいてくれて助かったと今は思う。でなければ、KMFが実戦で使用された時、扇の話は本当だったのだと言われかねない。 悩むルルーシュに、簡単な話だろうとC.C.は言った。 「お前のギアスを使えばいい。ナイトメアだけではなく、超合集国や黒の騎士団、フレイヤとダモクレスの記憶も邪魔だ」 製造方法は知らなくても、どう産み出されたかはあの時代の誰もが知っている。 誰かが興味を持ち、フレイヤを産みだしたら大変な事になる。 「悪魔と罵ってくれたのだから、子供らしい好奇心からその人物に会いたいと言う流れは作れるだろう?」 そう言いながらC.C.は桐原を見た。 「まあ、出来なくはない。今日中に非公式で会えるよう手を打とう」 桐原はそう言うと、席を立ち何処かに電話をかけ始めた。 扇が何を言うか解らない以上、扇への尋問を止めなければならない。 「C.C.、お前、クロヴィスに捉えられていた時、完全に動きを封じられていたな?あの装置の原理を知っているか?」 「私は捉えられていた側だぞ?何となく解る程度だ。どうしたんだ急に?」 毒ガスと言われたC.C.を封じていたカプセルの話に、いい思い出がないC.C.は不愉快そうに眉を寄せた。今まであんな物に興味など持たなかっただろうに。 「あの映像は、近いうちに必ずブリタニア皇帝の・・・いや、V.V.の目に触れるだろう。V.V.は間違いなく未来の記憶を持っている。黒の騎士団の幹部が俺の名前を知り、悪魔と呼んだその理由に必ず興味を持つはずだ。そして自分が知らない未来の話を知りたいという好奇心に抗う事は出来ない」 あくまでも、ゼロレクイエムまでを知る者が近くにいない仮定での話だが。 「成程な。そしてV.V.なら自ら乗り込んでくるか。シャルルにも内緒で」 いや、V.V.ならば、たとえゼロレクイエムを含む未来を誰かから聞いていても、騎士団幹部からも直接聞きたいと考えるだろう。 「だからこそ、扇を囮にV.V.を捕獲したい」 「ならば、最適な人間がいるじゃないか」 C.C.のその言葉に、ルルーシュは僅かに眉を寄せた。 数瞬考えた後、ルルーシュはロイドを見た。 「ロイド、お前の情報に間違いはないんだな」 「ああ、あれの話ですか?不確定な情報なら、お話ししませんよぉ」 と、ルルーシュの考えを察したロイドは口に笑みを乗せ告げた。 「ならばロイド。すぐに連絡を取り、協力を取り付けてくれ」 「イエス・ユアマジェスティ、お任せください陛下」 |